東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)169号 判決
一 前掲請求の原因のうち、原告が意匠権を有し、意匠に係る物品を投光器とする原告主張の登録意匠につき、被告の登録無効審判請求により審決が成立するにいたる特許庁の手続および審決の理由に関する事実は当事者間に争いがなく、引用意匠の対象とする物品が投光器であることは原告の自認するところである。
二 そこで、右審決に原告主張の取消事由があるか否かについて考察する。
(一) 成立に争いのない甲第二号証(本件意匠公報)および第三号証(引用意匠を表わす物品の実用新案公報)によると、本件意匠および引用意匠は、いずれも本体と支持台とから成る投光器を対象とし、その形状が、次に特記するほか、審決認定のように構成されたものであること(以下、両意匠の構成のうち原告が審決の認定を非とする点について)、本件意匠において、本体前方開口部に突設された枠体は全体として半球を心もち扁平にしたとはいえ、ほぼ半球状とも表現される形状に表わされ、本体丸鉢形部に連続する円筒部は、丸鉢形部の約一・八倍の深さで、後部が前部の約五分の三程度になるように次第に細く表わされるものであり、また、引用意匠において、本体丸鉢形部の開口部直径と深さと底部直径との比率は、一対約〇・三対約〇・五であり、本体円筒部は、丸鉢形部の約二・三倍の深さで、前部で相当きつく絞られたうえ後方に向いやや細く表わされるものであること(すなわち、審決の認定は以上の限度において修正さるべきものであること)が認められるが、両意匠の各構成について審決の認定の誤りを指摘する原告の主張は右認定の範囲を超えては採用することができない。
(二) そして、両意匠の間にその構成上少くとも審決認定の相違点があることは当事者間に争いがなく、両意匠の前記認定の構成並びに前出甲第二、三号証によると、そのほかにも、円筒部の周側端よりの角ばつた突出部のやや出張つた部分が、本件意匠にはあるが、引用意匠にはなく(代つて突出部に四つの止め鋲が引用意匠にのみある)、右突出部の後方側面より突出する小円筒状凸部の太さが、本件意匠においては右突出部後方側面の長さの約二分の一であるが、引用意匠においてはこれとほぼ同じであり、また、円筒部の板状体が、本件意匠においては右突出部の前方側面に接して円筒部のほぼ中央から突出しているが、引用意匠においては右突出部から離間し円筒部の先端附近から突出しているという相違があることが認められる。
(三) しかし、先に認定した両意匠の構成および別紙写真、図面(〔編註〕省略)を対比すると、両意匠は、対象とする投光器がいずれも本体と支持台とから成り、本体の基本的形状が丸鉢形の底部(後方)にコツプ状円筒部が連続したものであり、前方開口部に、周縁から等間隔に数本の細い帯状体が弧状を描いて中央の小輪に連続し、全体的にほぼ半球状の枠体が設けられ、コツプ状円筒部の周側の端よりの一方に角ばつた突出部(前後の長さが円筒部のそれの約半分)があり、その後方側面に小円筒状凸部が設けられ、その前方寄りの周側から外方に向つて厚みのある板状体が突出して支持部との連結部を形成している点において共通し、また、支持台部も、本体との高さの比率、連結の態様並びに概括的形態において互に近似しているため、全体として観察するときは、看者にほぼ同一の形状であるとの印象を与えるものであつて、前記のような構成上の相違点は、看者の注意を惹いて右印象を動かすに足るものではないと認めるのが相当である。してみると、結局審決が両意匠の構成について一部認定を誤り、また相違点を看過したことにより、その類否の判断に影響するところはなかつたものというべきであつて、審決に原告主張の違法があるということはできない。
三 よつて、本件審決の違法を主張してその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。